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京都簡易裁判所 昭和38年(ろ)55号 判決 1963年4月25日

被告人 高本強司

上訴権回復請求に対する決定

(被告人氏名略)

右の者標記被告事件に付て昭和三十八年三月十八日京都簡易裁判所に於て懲役壱年二月の判決言渡ありたるに対し、翌三月十九日控訴申立の意思を以て其手続を依頼したる処、誤つて上訴権抛棄の申立を為しある事判明したるを以て茲に上訴権回復の請求に及ぶ旨申立ありたるを以て、当裁判所は被告人本人、京都拘置所法務事務官野口茂同所在監人城米祥夫及同在監人松浦浩二を各証人として審訊したる結果其申立は理由ありと認め主文の通り決定する。

主文

被告人高木強司に対する本件上訴権を回復せしめる。

理由

被告人は昭和三十八年三月十八日京都簡易裁判所にて窃盗により懲役壱年弐月に処せられたるを不服として控訴申立の意思を以て、翌三月十九日当時担当の法務事務官野口茂には他に止むを得ぬ用務の為め不在なりしを以て同人の意を承け雑役に服し居たる京都拘置所在監人城米祥夫に控訴申立の意思を伝え、之れが手続を依頼したるが同人が直接前記担当官の事務卓子内より其用紙を取出すに当り、上訴権放棄申立書用紙と見誤りて之を被告人に手交し、被告人は無筆の為め控訴申立書と信じ同房の在監人松浦浩二に自己の拇印を押捺して渡し、所定事項の代筆を依頼し同人も亦控訴申立書を依頼せられたるものと信じ乍ら、被告人の署名、拇印を押捺せる上訴権放棄申立書を誤つて作製し、其情を知らざる前記担当官に提出し、所定の証明を受け以て同事務官をして真実被告人高本強司より上訴権放棄の申立ありたるものと誤信せしめて之を受理するに至り同月二十七日之れに基き、刑の執行指揮の手続を執るに至らしめて被告人をして茲に初めて上訴権放棄の誤りなりし旨発覚するに至り、右は全く被告人の責に帰す可からざる理由により上訴権放棄の挙に出でたる真相が判明したるものにして、本件上訴権回復の請求は理由ありと認む可く仍つて主文の通り決定する。

(裁判官 膳熊次郎)

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